第 二 十 日



『されどヱホバよわれなんぢにむかひてさけべり わがいのりはあしたにみまへにいたらん』(詩篇八八・十三

 この詩篇に於て、私共は、筆者がおおいなる暗黒と失望の中にあるのを見ます。祈禱がかれの唯一の慰安なぐさめであります。『わがすくひの神ヱホバよわれ晝も夜もなんぢの前にさけべり』(一節)。『われ日ごとになんぢをよべり ヱホバよなんぢにむかひてわが兩手もろてをのべたり』(九節)。『なんぢのくすしきみわざは幽暗くらきに……しらるゝことあらんや』(十二節)。『されどヱホバよわれなんぢにむかひてさけべり わがいのりはあしたにみまへにいたらん』。

 わが読者よ、あなたは幾分でも暗黒の中におりますか。あるいは、あなたは何か熱心に祈りつつあり、しかも神は答え給うようにも見えませんか。自らのためあるいは人のためのあなたの願望を前にして、あたかも、しゅは恵むことを忘れ給いしが如くでありますか。恐るるなかれ! 勇みなさい! ただ信ぜよ! しゅに申上げなさい、『わがいのりはあしたにみまへにいたらん』と。決して終日、神の前に、ただ溜息ばかりをもって過してはなりません。新鮮なる喜ばしき朝をして、あなたの信仰に教訓を与うるところあらしめなさい。しかしてあなたの祈禱に勇気を与えなさい。夜の最中さなかに於ては、すべてがぬばたまの真闇くらやみの暗黒さでありました。しかし、光はさして参りました。あけぼのの初光は、なお、かすかな薄明であったかは存じません。しかし、今やそれは光明であります。しかもそれはいよいよ光明を増して昼の最中さなかの全き光輝にまでいたります。朝に、神をしてあなたの声を聞かしめ奉りなさい。神われをきき給うとの静かなる確信を培養しなさい。神は終日われを忘れ給わず、しかしてわが祈禱に対する御答えはたしかであるとの確信を養われんことを。



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