第二十七章  誓願の献物



 利未レビ記は二十六章にてをはります。二十七章は附錄であります。けれどもこの附錄ははなはだ必要な附錄であります。私共わたくしども今迄いまゝで利未レビ記を讀みまして、心のうち如何どういふ感情がおこりましたらうか。私共は本當に利未レビ記がわかりましたならば、神のめぐみを感じて、身もたまも獻げたき心がおこります。この附錄は其樣そのやうな献身につける附錄であります。私共はこの利未レビ記を讀んで、身もたまも神に献げたくありまするならば、この附錄によりそのみちわかります。

 二〜八自己おのれを献げる事です。
 九以下けものを献げる事です。
 十四以下は家を献げる事です。
 十六以下田畑たばたを献げる事です。

 二、三節に『估價ねづもり云々』の事があります。これその人をあがなかねではありません。その人と一緖に献ぐる所のかねであります。神に仕ふる事はたふとい事であります。神に仕へたう御座りまするならばその身と一緖に供物そなへものを献げねばなりません。例之たとへば高貴たふとき先生の弟子となりたう御座りまするならば、おほくの謝禮をせねばなりません。そのやうに神に仕へたう御座りまするならば、その身と一緖に禮物そなへものを献げねばなりません。

 十節を御覽なさい。私共は神に一度いちど嚴肅に約束しまするならば、それを變へることは出來ません。でんだう五・四、五を御覽なさい。さうですからつゝしみもって神の前に約束をせねばなりません。時としては聖別會の時に、輕々しく神に約束する者がありました。オー神の前に恐れて約束をなさい。又一度いちど約束をしましたならば、何卒どうぞ必ずそれを成就なさい。

 けれども約束したものがきよくありません時には、それをあがなみちがあります(十三十九)。その時には神の前に正しく誓願を成就せねばなりません。

 身を献げまするならば、あるひは神に物を献げまするならば、あるひかねの十分の一を献げるといひまするならば、神の前に正しくそれを成就なさい。ある人はその約束をしたるのちに、輕々しくそれを行ひます。例令たとへばかねの十分の一を献ぐるといひましても、本當に夫丈それだけを献げてるか、あるひは献げてりませんか、曖昧なるまゝにてすごします。私共は人間に嚴肅なる契約を立てましたやうに、神と結んだる契約を成就せねばなりません。

 八節をはりを御覽なさい。私共は今迄いまゝで利未レビ記のふみを硏究しました。これはだ知識をる事のみではありません。私共の心のうちに、どういふ感謝が殘ってりますか。『その誓願者の力にしたがひて估價ねづもりをなすべし』。神は私共に献身を願ひ給ひます。アブラハムの力は何程なにほどでしたか。彼の愛する息子でありました。神たる祭司はアブラハムの力に從うて估價ねづもりし給ひました。ハンナの力は何程なにほどでしたか。長い間いのりうち俟望まちのぞんだる小さき小兒せうにでありました。その誓願者はその力に從うて誓願を成就しました。福音書の寡婦やもめをんなその力は何程なにほどでありましたか。ふたつのレプタでありました。けれどもそれはその寡婦やもめをんなすべての財產でありました。誓願者はその力に從うて估價ねづもりをします。尚々なおなおたふと思念おもひもって神の力を計りまするならば、神の力は何程なにほどでしたか。その生み給へる獨子ひとりごを與へ給ふことでした。又神もその力に從うて估價ねづもりをなし給うて、人間に自分の身もたまも與へ給ひました。オー兄弟姉妹よ、私共の力は何程なにほどですか。神は必ず私共の力に從うて、估價ねづもりし給ひます。この人々はその力においおほいなる相違がありました。僅かふたつのレプタはじついやしき力と見えます。けれども誓願者はその力に應じて、神に供物そなへものをせねばなりません。オー兄弟姉妹よ、卿等あなたがたは神の前にそれ估價ねづもりせねばなりません。又神は卿等あなたがた何程なにほどを願ひ給ふかを估價ねづもりなさい。卿等あなたがたは神の愛を感じ、神のめぐみを感じ、卿等あなたがたの主に何程なにほどを献げなさいますか。

 利未レビ記の講義はこれでをはりました。今共に祈りませう。

 きよき父よ、私共がこの驚くべき書物ふみを硏究してりました時に、あなたは私共とともいまして、私共を敎へ給ひました。私共はあなたより頂戴したるすべてめぐみついあなたに感謝いたします。たゞ私共の心の準備そなへさへもっと出來てりましたならば、あなたは御自身の憐憫あはれみと、また注がれたる聖血ちしほついて、一層深く私共に默示あらはし給ふ事が出來ましたでせう。これを思うて私共の心の準備そなへ行届ゆきとゞかざりし事をかなしみます。けれども何卒どうか續いて私共の心を開きて、氣付かざりし敎訓をしへを悟らせ給へ。何卒どうぞあなたことばを聽くために、あなたの足許あしもとすまふ事を得させ給へ。

 あなたあなたの名を私共に默示あらはし給ひました。あなた何程どれほどの御方にいますかを知りまして、それに勵まされて、私共自身を全くあなたに献げます。又私共のもってをるすべてを献げます。私共は喜んであなたの前に燔祭はんさいとなる事をこひねがひます。あなたきよき火を常に私共のうちもやし、肉につけすべてを燒盡やきつくして、私共の生涯を、あなたの前にかうばしきにほひある犧牲いけにへとなし給はんことを願ひたてまつる。アーメン、アーメン。

利未レビ記講義 終



大正六年四月廿八日印刷     定價七十錢
大正六年五月一日發行       郵稅八錢

著作者  ビー・エフ・バックストン

     東京市赤坂區氷川町五番地
發行者    ジョージ・ブレスウェート

     東京市京橋區弓町廿五番地
印刷者    高  橋    郁

     東京市京橋區弓町廿五番地
印刷所    三協印刷株式會社

發行所 東京市麴町區有樂町二ノ三 基督敎書類會社
        電話本局三五七三
        振替東京二二七三


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