約  百  記 
		 第 三 十 一 章 
		
		
		
			-  我わが目と約を立たり、何ぞ小艾を慕はんや 
			
 -  然せば上より神の降し給ふ分は如何なるべきぞ 高處より全能者の與へ給ふ業は如何なるべきぞ 
			
 -  惡き人には滅亡きたらざらんや 善らぬ事を爲す者には常ならぬ災禍あらざらんや 
			
 -  彼わが道を見そなはし、わが歩履をことごとく數へたまはざらんや 
			
 -  我虛誕とつれだちて歩みし事ありや、わが足詐僞に奔從がひし事ありや 
			
 -  請ふ 公平き權衡をもて我を稱れ、然ば神われの正しきを知たまはん 
			
 -  わが歩履もし道を離れ、わが心もしわが目に隨がひて歩み、わが手にもし汚のつきてあらば 
			
 -  我が播たるを人食ふも善し、わが產物を根より拔るゝも善し 
			
 -  われもし婦人のために心まよへる事あるか、又は我もしわが隣の門にありて伺ひし事あらば 
			
 -  わが妻ほかの人のために臼磨き、ほかの人かれの上に寢るも善し 
			
 -  其は是は重き罪にして裁判人に罰せらるべき惡事なればなり 
			
 -  是はすなはち滅亡にまでも燬いたる火にしてわが一切の產をことごとく絕さん 
			
 -  わが僕あるひは婢の我と辨爭ひし時に我もし之が權理を輕んぜし事あらば 
			
 -  神の起あがりたまふ時には如何せんや、神の臨みたまふ時には何と答へまつらんや 
			
 -  われを胎内に造りし者また彼をも造りたまひしならずや、われらを腹の内に形造りたまひし者は唯一の者ならずや 
			
 -  我もし貧き者にその願ふところを獲しめず、寡婦をしてその目おとろへしめし事あるか 
			
 -  または我獨みづから食物を啖ひて孤子にこれを啖はしめざりしこと有るか 
			
 -  (却つて彼らは我が若き時より我に育てられしこと父におけるが如し 我は胎内を出てより以來寡を導びくことをせり) 
			
 -  われ衣服なくして死んとする者 あるひは身を覆ふ物なくして居る人を見し時に 
			
 -  その腰もし我を祝せず、また彼もしわが羊の毛にて温まらざりし事あるか 
			
 -  われを助くる者の門にをるを見て我みなしごに向ひて手を上し事あるか 
			
 -  然ありしならば肩骨よりしてわが肩おち 骨とはなれてわが腕折よ 
			
 -  神より出る災禍は我これを懼る、その威光の前には我能力なし 
			
 -  我もし金をわが望となし、精金にむかひて汝わが所賴なりと言しこと有か 
			
 -  我もしわが富の大なるとわが手に物を多く獲たるとを喜こびしことあるか 
			
 -  われ日の輝くを見または月の輝わたりて歩むを見し時 
			
 -  心竊にまよひて手を口に接しことあるか 
			
 -  是もまた裁判人に罪せらるべき惡事なり、我もし斯なせし事あらば上なる神に背しなり 
			
 -  我もし我を惡む者の滅亡るを喜こび、又は其災禍に罹るによりて自ら誇りし事あるか 
			
 -  (我は之が生命を呪ひ索めて我口に罪を犯さしめし如き事あらず) 
			
 -  わが天幕の人は言ずや 彼の肉に飽ざる者いづこにか在んと 
			
 -  旅人は外に宿らず、わが門を我は街衢にむけて啓けり 
			
 -  我もしアダムのごとくわが罪を蔽ひ、わが惡事を胸に隱せしことあるか 
			
 -  すなはち大衆を懼れ、宗族の輕蔑に怖ぢて口を閉ぢ門を出ざりしごとき事あるか 
			
 -  嗚呼われの言ところを聽わくる者あらまほし(我が花押こゝに在り 願くは全能者われに答へたまへ)我を訴ふる者みづから訴訟狀を書け 
			
 -  われ必らず之を肩に負ひ、冠冕のごとくこれを首に結ばん 
			
 -  我わが歩履の數を彼に述ん、君主たる者のごとくして彼に近づかん 
			
 -  わが田圃號呼りて我を攻め、その阡陌ことごとく泣さけぶあるか 
			
 -  若われ金を出さずしてその產物を食ひ、またはその所有主をして生命を失はしめし事あらば 
			
 -  小麥の代に蒺藜生いで、大麥のかはりに雜草おひ出るとも善し ヨブの詞をはりぬ 
		
 
		
		
		
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