第百四十六篇以下  題目 ハレルヤ、ハレルヤ



  1. ヱホバを讃稱ほめたゝへよ わがたましひよヱホバをほめたゝへよ
  2. われいけるかぎりはヱホバをほめたゝへ わがながらふるほどはわが神をほめうたはん
  3. もろもろのきみによりたのむことなく 人の子によりたのむなかれ かれらにたすけあることなし
  4. その氣息いきいでゆけばかれ土にかへる その日かれがもろもろの企圖くはだてはほろびん
  5. ヤコブの神をおのがたすけとなし そののぞみをおのが神ヱホバにおくものはさいはひなり
  6. はあめつちと海とそのなかにあるあらゆるものを造り とこしへに眞實まことをまもり
  7. しへたげらるゝもののために審判さばきをおこなひ ゑたるものに食物くひものをあたへたまふ神なり ヱホバはとらはれたる人をときはなちたまふ
  8. ヱホバはめしひの目をひらき ヱホバは屈者かゞむものをなほくたゝせ ヱホバはたゞしきものをいつくしみたまふ
  9. ヱホバは他邦人あだしくにびとをまもり 孤子みなしご寡婦やもめとをさゝへたまふ されどあしきもののみちはくつがへしたまふなり
  10. ヱホバはとこしへに統御すべをさめたまはん シオンよなんぢの神はよろづまで統御すべをさめたまはん ヱホバをほめたゝへよ

 本篇より百五十篇に至る五つの篇はハレルヤハレルヤの詩篇なり。是等これらの詩篇においてはそのはじめをはりとに『ヱホバを讃稱ほめたゝへよ』(原語にてハレルヤ)とあり。その二つのハレルヤの間に何故なにゆゑ讃美すべきやその理由を示す。
▲詩篇をはじめよりをはりまで注意して硏究すれば基督者クリスチャン生涯におけるあらゆる經驗を記せり。あるひは困難に陷りし場合、あるひは罪を犯せし時、あるひ聖言みことばの光を得たる時、又は勝利を得たる時等いろいろの場合の事を記す。しかして詩篇を讀みもてうちに漸次神をむる心おこり、つひにはたゞハレルヤハレルヤの心のみとなるに至る。人がハレルヤといふ事を心より言ひ得るに至らばその人は全き人なり。まことに正しくハレルヤをとなふる事を得ばその人はきよめられみたまに滿されし人なり。そもそも神が我等人類に對して有し給ふ御目的おんもくてきなになりやといふに、畢竟ひっきゃうするにこのハレルヤをとなふる事を敎ふるにありといふも差支さしつかへなし。神はこの一つの目的の爲にすべての事をなし給ふなり。神は御自身をのろふ者又御自身を憎む者の心をとかして、その心よりのろひ憎にくしみの心を漸次取去とりさりてその心にハレルヤの心を滿みたし給ふ。神は何故なにゆゑ十字架上にてかちを得給ひしや、またなにゆゑ聖靈みたまを與へ給ふやといふに、我等各自にハレルヤをとなふる事を學ばしめんが爲なり。換言せばこの詩篇のをはりの五篇を敎へんが爲なり。ればハレルヤの心を養はんが爲に我等は屢々しばしばこの五つの詩篇を讀むべきなり
▲第百四十六篇の分解
 (一〜五)神に依賴よりたのむ者は幸福さいはひなり
 (六〜十)神の御業みわざ賜物たまものを述べて讃美すべきを勸む
▲六節以下において次の事を見よ。
一、神の創造の力(六はじめ)──『はあめつちと海とそのなかなるあらゆるものを造り』
二、神の信實(六をはり)──『とこしへに眞實まことをまもり』
三、その公平(七はじめ)──『しへたげらるゝもののために審判さばきをおこなひ』
四、その恩惠めぐみ(七中程)──『ゑたるものに食物くひものをあたへえたまふ神なり』
五、自由を與へ給ふ(七をはり)──『ヱホバはとらはれたる人をときはなちたまふ』
六、光を與へ給ふ(八はじめ)──『ヱホバはめしひの目をひらき』
七、力を與へ給ふ(八中程)──『ヱホバは屈者かゞむものをなほくたゝせ』
八、愛し給ふ(八をはり)──『ヱホバはたゞしきものをいつくしみたまふ』
九、護り給ふ(九はじめ)──『ヱホバは他邦人あだしくにびとをまもり』
十、助け給ふ(九中程)──『孤子みなしご寡婦やもめとをさゝへたまふ』
十一、あしき者をばっし給ふ(九をはり)──『されどあしきもののみちはくつがへしたまふなり』
 是等これらの事を見て二節の如く『いけるかぎりはヱホバをほめたゝへん』



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