第二十九篇  題目 神の聖聲みこゑ



ダビデの歌

  1. なんぢら神の子らよ ヱホバにさゝげまつれ さかえちからとをヱホバにさゝげまつれ
  2. そのみなにふさはしき榮光をヱホバにさゝげまつれ きよきころもをつけてヱホバを拜みまつれ

  3. ヱホバのみこゑは水のうへにあり えいくわうの神はいかづちをとゞろかせたまふ ヱホバは大水おほみづのうへにいませり
  4. ヱホバのみこゑはちからあり ヱホバのみこゑは稜威みいつあり
  5. ヱホバのみこゑは香柏かうはくををりくだく ヱホバ、レバノンのかうはくををりくだきたまふ
  6. これをこうしのごとくをどらせレバノンとシリオンとをわかき野牛のうしのごとくをどらせたまふ
  7. ヱホバのみこゑは火熖ほのほをわかつ
  8. ヱホバのみこゑはをふるはせ ヱホバはカデシのをふるはせたまふ
  9. ヱホバのみこゑは鹿に子をうませ また林木はやしをはだかにす その宮にあるすべてのものよばはりて榮光なるかなといふ
  10. ヱホバは洪水のうへにしたまへり ヱホバは寳座みくらにざして永遠とこしへに王なり
  11. ヱホバはそのたみにちからをあたへたまふ 平安やすきをもてそのたみをさきはひたまはん

 本篇を十九篇と對照せよ。すなは
 十九篇 は神の聖言みことば
 廿九篇 は神の聖聲みこゑ について記す。前者によりて如何いかなる恩惠めぐみを得るかを見、又後者によりて如何いかなる恩惠めぐみを得るかを見よ。
ける神の聖聲みこゑ
一、香柏かうはくの如き强固なる者をも碎き給ふ(五)──『ヱホバのみこゑは香柏かうはくををりくだく ヱホバ、レバノンのかうはくををりくだきたまふ』(徒九・四〜六參照、サウロは香柏かうはくの如き者なりき)
二、あふるゝばかりの元氣(能力ちから)を與へ給ふ(六)──『これをこうしのごとくをどらせレバノンとシリオンとをわかき野牛のうしのごとくをどらせたまふ』(山の如き感情なき者をも動かし給ふ)
三、ける火を與へ給ふ(七)──『ヱホバのみこゑは火熖ほのほをわかつ』(徒二・三參照)
四、一般の人々の心を動かし給ふ(八)──『ヱホバのみこゑは野をふるはせ ヱホバはカデシの野をふるはせたまふ』(徒八・六參照、ヱホバの聖聲みこゑは野を震動させてサマリヤにリバイバルをおこし給へるなり
五、重荷おもにを負へる者をやすませ給ふ(九はじめ)──『ヱホバのみこゑは鹿に子をうませ』(徒八・三十八參照)
六、心の深所ふかみを探り給ふ(九中程)──『また林木はやしをはだかにす』(徒二・三十七參照)
▲最初の一節と最後の十一節とを對照せよ
 1. ヱホバに獻げよ(一)──『なんぢら神の子らよ ヱホバに獻げまつれ』
 2. ヱホバは與へ給ふ(十一)──『ヱホバはその民にちからをあたへたまふ 平安やすきをもてその民をさきはひたまはん』
▲十一節の力と平安やすきなどの祝福は何處いづこよりきたるや。十節にある如く昇天の主よりきたなり
 『ヱホバは寳座みくらにざして永遠とこしへに王なり』
 詩人は此處こゝに目を擧げ、この主をあふぎて力と平安やすきを得るとの確信を得たるなり



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